ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「頭痛肩こり樋口一葉」

日本/'84年公演/こまつ座井上ひさし作、木村光一演出)


日本随一の戯作者井上ひさしの劇団「こまつ座」旗揚げ作品・初演版。当時から高い評価を得ながらも貧乏で苦しい生活。さらに病魔に侵され25歳という若さでこの世を去った明治の女流作家、樋口一葉の半生を描く。
毎年のお盆に一葉と周りの親類たちが本家に集まってのドタバタ騒ぎ。実家が没落して金を貸せだの結婚したものの上手くいかないだの、明るい話題はなーんもなく。そこに表れるのが女の幽霊。一葉にしか見ることのできないこの幽霊、なんと記憶喪失。誰に恨みをはらせばいいのかわからんなどと言っていつのまにか出てきてはいなくなる。
繰り広げられるのは暗〜い話題ばかりなのに妙に明るいこの芝居。なんせ幽霊シーンが一番明るい。幽霊役の新橋耐子の存在感は格別です。歌舞伎よろしく彼女が退場する毎に客席から拍手が起こるほど。それだけのインパクトがあります。