ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

てんぷくトリオのコント

日本/’14年公演/こまつ座ラサール石井作、青木豪演出)


こまつ座の座付き作家・井上ひさしと劇団代表である娘とのやり取りを交えながら、てんぷくトリオの往年のコントを蘇らせる。
つまるところ、井上ひさし論であり、亡き後のこまつ座論でした。もちろんこまつ座作品とはいえ井上戯曲ではないのでどうしても物足りなさを覚えてしまうし、井上の筆がベースとなっているコント自体も時代の経過に耐えられないものが多かったものの、こういったかたちでの記録と研究、そして伝承はありだと思います。評論版とかエッセー版とかも観てみたい。
役者のやるコントと芸人(我が家)のやるコントは、全く感触が異なるのが興味深い。

Believe2023 六人の覇王

日本/’23年上演/名古屋おもてなし武将隊事務局(西田シャトナー作・演出)


名古屋おもてなし武将隊」が時空のゆがみに巻き込まれタイムスリップするなか、時のいたずらで叶わなかった真の覇王を巡る闘いが幕を開ける。名古屋観光のコンセプト団体が西田シャトナーを招いた作品です。
シャトナーの代表作『Believe』だったかと問われればそうではなかったけれど、かつての武将が現代に蘇ったという既存コンセプトをフルに活かした設定変更は非常に良かったし、インド映画でのミュージカル部分のように入れざるをえない演舞にも必然性があったし、きっと運営事務局以上にコンセプトに忠実であろうとしていたのではないかしら。そういう誠実さに惚れる。
パワーマイムは少なめながら、巨大ロボまで出てくるシャトナー節をやり遂げた武将隊に拍手。

日本神だもの

日本/’23年上演(再演、マチネ)/劇団蒼天の猫標識(いば正人作・演出)


信仰心の薄れる現代日本の家族の話。名古屋の「劇団蒼天の猫標識」によるコロナ延期を経ての再演作品です。
はっきりとしたキャラクター造詣と、愛だの恋だの中高生の悩み事に異形の者たちが絡んでいくうちに知らぬ間に世界を巻き込んでしまう展開は、ゼロ年代のアニメーション作品感強し。家族観や国民性、引きこもりの捉え方に気になる点はありましたが、もう少し気楽なエンターテインメントとして受け取っていいタイプというものもある。
群像劇なので、個々のサイドストーリーでメディアミックスできそう。

心霊探偵八雲 裁きの塔

舞台版『心霊探偵八雲 裁きの塔』 [DVD]
日本/’17年公演/シン×クロ、ネルケプランニング神永学・丸茂周作、伊藤マサミ演出)


特殊な目をもつ男が、時計塔を舞台とした殺人事件の真相に迫る。神永学の小説をはじめとしたメディアミックス作品の舞台版です。
予備知識なく観て、登場人物の関係性を掴むのに少し時間がかかりましたが、全体的にキャラメルボックス感のある組み立てだったのでわかりやすく。主人公だけに霊が見えるという設定があまり活かされていないのと、説明的なシーンが多いのかドラマが滞留する部分が多く、少し寝てしまいました。キャラメルぽかったからこそ物足りないのかもしれません。
タイトルロールに久保田秀敏。ヒロインは美山加恋

寒い国から帰ったスパイ

寒い国から帰ったスパイ(スペシャル・プライス) [DVD]
米/’65年製作/マーティン・リット監督


東西ドイツの諜報部による騙し合い。
冷戦時の情報戦をビジネスライクに手掛ける諜報部員が、作戦遂行中に恋に落ち、人間としての情を持ってしまう。清濁あわせもち、微妙なパワーバランスが崩れた方が死ぬゲームのような世界に、主人公は正義を感じることができずあくまで仕事だと自らに言い聞かせている姿が珍しく。主義主張ではなく個々の人間として描いているところが好印象でした。
リチャード・バートンとクレア・ブルーム。