ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

舞踏会の手帖

舞踏会の手帖 ジュリアン・デュヴィヴィエ監督 HDマスター [DVD]
仏/’37年製作/ジュリアン・デュヴィヴィエ監督


夫を亡くした若妻が、20年前の舞踏会で出会った男たちに会いに行く。
過去にすがるためにはじめた旅は、いつしか未来へ歩むための道に変わっていく。死を選んだもの、夢をあきらめたもの、新たな生きがいを見つけたもの…。さまざまな境遇に身を置く男たちを目の当たりにし、美化された思い出に別れを告げる。孤独を感じつつも、孤独を共有することで、孤独でなくなる。それぞれの男たちをどうにかするわけではなくあくまで主人公のみの立ち直りの物語で好感をもちました。
年齢不詳のマリー・ベル。

十二人の死にたい子どもたち

十二人の死にたい子どもたち
日本/’19年製作/堤幸彦監督


自殺志願の少年少女たちが集まる秘密の会合に、誰も知らない13人目が現れる。冲方丁の同名小説を映画化したものです。
いやそれはないだろうという突っ込みはひとまず置いておいて、ネタバレが過ぎる描き方に興醒め。ミステリーとしてもサスペンスとしても弱い。ただそれよりも、陪審員制度を舞台にした『十二人の怒れる男』や『12人の優しい日本人』を意識した設定であることは明らかで、人間ドラマとして死の評決を描けばそれでよかったのに、事件性に終始したことでテーマがぶれてしまったように思えてなりません。
名探偵は新田真剣佑。これだけ揃えたなら演劇でやればいいのに。

デューン/砂の惑星

デューン/砂の惑星 劇場公開版 [DVD]
米/’84年製作/デイヴィッド・リンチ監督


宇宙の勢力図を変える資源を巡り、救世主と予言された男が敵に立ち向かう。
詰め込みすぎてダイジェスト版のよう。宇宙を股にかけた壮大なスケールの世界観のはずなのに、個人的な復讐が動機であるように主人公の周りでなんだか小さくまとまってしまい、不完全燃焼でした。そこにあるはずの生活が見えなくて。結局スパイスと砂蟲の関係性はなんだったのかしら。砂漠の民とは、予言とは、航宙ギルドとは、超能力とは。1年クールのテレビドラマであればもっと面白くなったように思いました。
精悍な若者のカイル・マクラクラン

ラクダ

日本/公演中(ソワレ)/16号室(八代将弥a.k.a.SABO作・演出)


女たらしのマスターの居るカフェバーに集まる女たちの狂気と愛。名古屋の劇団「room16」の作品を後身の企画団体により上演した作品です。ケースBのキャストで、初観劇。
演劇よりも映画で観たいなと思う。前半と後半とで違う作品を観たかのようで、どうもしっくりこないというのがとりあえずの感想です。3人の女たちはそれぞれの理由でイケメンの傍にいるけれども、共通するのは彼が自分を自分たらしめてくれる存在なのだろうと。それを永遠化する前半まではわかる。ただ後半は、内容ではなく視点そのものがゴシップ的展開になってしまい、主人公も一瞬作家にぶれるので、戸惑いました。あと、客席が観づらい。
主人公におぐりまさこ、マスターに渡部将之、作家にツチヤチカら。

機械と音楽

日本/’19年公演(再演)/serial number(詩森ろば作・演出)


ロシア革命前後に起こった芸術運動「ロシア・アヴァンギャルド」のなかで理想と現実の狭間に揺れた建築家たちの物語。風琴工房あらためserial numberは初鑑賞です。
共産主義社会主義の違いすらままならなず、およそ30年前ソ連とともに崩壊したと認識しています。それほど何も知らない時代の、熱き芸術論と社会論。頭で語られる理想と、寄り添うはずだった民衆の支持を得られない現実。そのギャップこそがソ連の軋みを炙り出しているようでなりません。天才と秀才が寄ってたかって夢想し、それでいて何もできなかったこの芸術運動は、芸術の社会での在り方そのものまで問うているようです。
実在の不遇の天才建築家を演じた田島亮エナジー。浅野雅博の飄々とした演技も良い。

ドラえもん のび太の月面探査記

映画ドラえもん のび太の月面探査記 DVD通常版(特典なし)
日本/’19年製作/八鍬新之介監督


月面に隠れて暮らす宇宙人と出逢い、かつて住んでいた星の危機を救う。
「想像力は未来」という大きなテーマが貫かれた作品として、近年の「映画ドラえもん」シリーズのなかでは抜群に素晴らしい。とはいえ気になる部分が多いのも事実。「友達」の描き方が浅いのもそうですが、特にかつて『~宇宙小戦争』では独裁政権に対して人民が自ら立ち上がったのに対し、今作では自分の星を取り戻すのも他人事になってしまっている点。そこに住んでいる人々への視点が欠けているのが本当に残念でした。
柳楽優弥の声が最後まで違和感。