ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

湯を沸かすほどの熱い愛

湯を沸かすほどの熱い愛
日本/’16年製作/中野量太監督


余命宣告をうけた母親が、家族と向き合っていく死と再生の物語。
さりげない描写が記憶に残り、伏線として鮮やかに回収されていく巧みな脚本に唸る。よくある余命モノであるにもかかわらず、観終わったあとの清々しさたるや。誰よりも他人の主人公が、誰よりも家族を愛し、𠮟咤し、励ましていく。何より良かったのは、そこに押しつけがましさが一切ないこと。他人のためではなく、自分ごととして他者と対峙する姿勢に強く共感を覚えました。
信念の宮沢りえオダギリジョーも、杉咲花も、好演。

さらば、わが愛 覇王別姫

さらば、わが愛 覇王別姫(字幕版)
香港/’93年製作/チェン・カイコー監督


京劇が巻き込まれた時代のうねりと、翻弄され続けた役者の物語。
文化芸術と時代は切っても切れない関係で。時の権力者を利用し、利用されるのが世の常で、これは世界中どこでも変わらない。中国の変革の歴史絵巻のなかで、役に魅入られた男は、覇王を愛し、姫としての死を選ぶ。この愛を狂気と呼ぶか純愛と呼ぶかは難しいけれど、心を揺さぶるものは確かにある。
レスリー・チャンのまなざし。コン・リーの強弱併せ持つ美。

蜘蛛巣城

蜘蛛巣城[東宝DVD名作セレクション]
日本/’57年製作/黒澤明監督


妖しの予言に踊らされ城主となった男の破滅までを描く。シェイクスピアの戯曲「マクベス」を戦国時代に置き換えた作品です。
どうも地味な印象なのは、能の様式美を映画で表現しようとしているからで、きっと好みの問題。どうもこちら側の感性が試されているかのような感じがして、素直に観ることができない自分がいました。マクベス自体、主役に主体性がなさすぎて観ていてイライラするのでやっぱり好みの問題。
マクベスの真の主役は妻で、そして山田五十鈴は絶品。

スーパー・チューズデー 正義を売った日

スーパー・チューズデー ~正義を売った日~ [DVD]
米/’11年製作/ジョージ・クルーニー監督


陰謀渦巻くアメリカ大統領選挙予備選挙陣営を描く。
信念と欲望。政治を志すのは正義の心であり、勝利をつかむのは駆け引きであるということ。大統領選がビジネスになっているアメリカではあるけれども、大小の何かしらは日本でも変わらないのでしょう。ただ、それが悪いと断罪するより、自分が何を信じるか、それだけです。さておき、ラストは好みではない、その先は。
偶然2日続けてのライアン・ゴズリング。表情が一変する様に鳥肌。

ラ・ラ・ランド

ラ・ラ・ランド(字幕版)
米/’16年製作/デイミアン・チャゼル監督


ジャズピアニストと役者の卵が夢と現実の狭間に揺れる。アカデミー賞監督賞はじめ6部門受賞作です。
往年のミュージカル映画を観ているかのよう。目新しさはないけれど安心して観られるというべきか、安心して観られるけれど目新しさはないというべきか。「賢者の贈り物」よろしくすれ違う二人が最後に、あったかもしれない未来を見るというのは映画そのものでもあって良し。
ライアン・ゴズリングエマ・ストーン。素敵なカップリング。

未来のミライ

「未来のミライ」スタンダード・エディション [DVD]
日本/’18年製作/細田守監督


妹が生まれて両親の愛情に疑問を抱く少年が遭遇する不思議な出会い。
さて、なんだったのか。視点が子育て世代側だから、「こういうことでグズったりするよね」とはなっても「こういう感情だったなあ」という自分事にはならなくて。家の記憶、土地の記憶が積み重なって自分がいるというのはわかるけれども不完全燃焼。あと未来のミライはあまり関係なかった。
声優の違和感が拭えなかった。特に主人公の上白石萌歌は声に落ち着きがありすぎてキャラクターと合わず。

3CASTS vol.14

日本/公演終了/オムニバス形式


3人/組によるパフォーマンスを上演する京都のショーケースイベント。今回は、石川信子、牛嶋千佳、アミジロウの3者によるものを観劇。
一本目は石川『時間がない人のための卍-光子の不在-』。谷崎潤一郎の四つ巴な色恋醜聞話。小説の中を映像駆使して具象化するも、時間がない人はこれだけの分量は観れない。二本目は牛嶋『お写真』作:山本正典(コトリ会議)。動物園の檻前の老齢夫婦の会話劇一人芝居。場所も相手もすべて妄想かもしれない。三本目はアミジロウ『ユニットE』作:殿井歩(よいとな)。工場のバックヤードで来なくなった同僚に贈るエール、再演。応援相手の妄想と理解しておく。
牛嶋の濃縮された空気に溺れた。