ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

心霊探偵八雲 裁きの塔

舞台版『心霊探偵八雲 裁きの塔』 [DVD]
日本/’17年公演/シン×クロ、ネルケプランニング神永学・丸茂周作、伊藤マサミ演出)


特殊な目をもつ男が、時計塔を舞台とした殺人事件の真相に迫る。神永学の小説をはじめとしたメディアミックス作品の舞台版です。
予備知識なく観て、登場人物の関係性を掴むのに少し時間がかかりましたが、全体的にキャラメルボックス感のある組み立てだったのでわかりやすく。主人公だけに霊が見えるという設定があまり活かされていないのと、説明的なシーンが多いのかドラマが滞留する部分が多く、少し寝てしまいました。キャラメルぽかったからこそ物足りないのかもしれません。
タイトルロールに久保田秀敏。ヒロインは美山加恋

寒い国から帰ったスパイ

寒い国から帰ったスパイ(スペシャル・プライス) [DVD]
米/’65年製作/マーティン・リット監督


東西ドイツの諜報部による騙し合い。
冷戦時の情報戦をビジネスライクに手掛ける諜報部員が、作戦遂行中に恋に落ち、人間としての情を持ってしまう。清濁あわせもち、微妙なパワーバランスが崩れた方が死ぬゲームのような世界に、主人公は正義を感じることができずあくまで仕事だと自らに言い聞かせている姿が珍しく。主義主張ではなく個々の人間として描いているところが好印象でした。
リチャード・バートンとクレア・ブルーム。

妻への家路

妻への家路(字幕版)
中国/’14年製作/チャン・イーモウ監督


文化大革命が終わり帰ってきた元政治犯の夫と、彼を認識できない記憶喪失の妻との時間と距離。
帰宅を待ち続ける最愛の人の隣に他人として居続けるその心境たるや。時代に翻弄されたと片付けてしまえば簡単ですが、その言葉の向こう側には生きている人がいて。直接的な表現を避けて様々なことがじんわりと浮かび上がるからこそ、誰を恨むのではなく、誰を責めるのではなく、寄り添うことを選んだ男と、両親を見守る娘に、観る者も寄り添えるのだと思います。
表情と佇まいで演技するコン・リーとチェン・ダオミン。

魔女の宅急便

魔女の宅急便 [DVD]
日本/’89年製作/宮崎駿監督


見習い魔女が様々な人生経験を経て一人前になる姿を追う。角野栄子の同名小説をスタジオジブリがアニメ映画化した作品です。観るのはこれで何度目か。
久々に観て、冒頭の旅立ちのシーンでついに親の側に感情移入してしまったんだなあと感慨深く。大きなワクワクと小さなチクチクをいっぱい連れてオトナへの一歩を踏み出してきたし、まだこれからも歩いていく。そんな背中を、パン屋のオソノさんのように、友人のウルスラのように、いつまでも温かく見守ってくれる映画なのだと思うのです。
高山みなみの2役は承知していても認識できない。

ヴェローナの二紳士

ヴェローナの二紳士 [Blu-ray]
日本/’15年公演/公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団ホリプロ(W.シェイクスピア作、蜷川幸雄演出)


恋に翻弄される男と女の喜劇。彩の国シェイクスピアシリーズのオールメール作品のひとつです。
終わり良ければ総て良しの精神過ぎて「お前いい加減にしろよ」のオンパレード。愛の誓いを簡単に破り、友情を裏切り、それを俺はこんなに苦悩してるんだぞという男。カッコイイ顔してカッコイイ台詞で語っても言っていることはクソ。一途な友人はまともかと思いきやラストにひとことだけいらんことを言う。それに比べて女性陣のたくましさたるや。
カップリングは溝端淳平三浦涼介高橋光臣と月川悠貴。月川は相変わらず性別を超える。