ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

すばらしき世界

日本/’21年製作/西川美和監督


服役をおえた元暴力団構成員が社会の冷たさとやさしさにであう。佐木隆三の小説の映画化です。
タイトルが凡庸でピンとこないなあと思いながら、観終わるときにその秀逸さに気づく。短気で暴力的な性格はあれど純粋で真っ直ぐな男が生き抜くにはこの世界は不寛容すぎて。目を瞑り、耳を塞ぎ、口を噤むことが社会で生活するための条件であるということを積極的に否定できないことがつらい。たくさんの人に支えられてやっと未来が見え、ついに順応することを選んだときに無慈悲に「死」が訪れたのは、肉体だけでなく、たぶん精神も。
疎外感がヒシヒシと伝わる役所広司

記憶にございません!

記憶にございません!
日本/’19年製作/三谷幸喜監督


記憶喪失になった総理大臣がしがらみを断ち切り自らの信じる政治をすすめていく。
政界を舞台としつつホームドラマ的に描くのは三谷幸喜脚本によるテレビドラマ「総理と呼ばないで」と同じ手法。低支持率のダメ首相がその誠実さで変化を起こしていくという筋書きも同じで、おおむね既視感。言い逃れの常套句「記憶にございません」を盛大に茶化したタイトルどおりの、そしてタイトル以上のものは特にない設定頼りの作品なので、またテレビドラマとして連続ものにした方がよかったのでは。
とぼけつつ要所をおさえる中井貴一。それを喰おうとする草刈正雄

紅の豚

紅の豚 [DVD]
日本/’92年製作/宮崎駿監督


アドリア海を舞台に、豚の姿をした賞金稼ぎをはじめとした誇り高き飛行艇乗りの姿を描く。宮崎駿の漫画を原作としたスタジオジブリ作品です。
もう何度観たかわかりませんが、とにかく昨日亡くなられた森山周一郎を偲んでの再鑑賞。小学生で初めて観たときはコミカルな描写に笑いつつダンディズムにしびれていましたが、年齢を重ねるにつれて哀愁と男女の機微に震えるようになりました。糸井重里によるコピー「カッコイイとは、こういうことさ」のダサかっこよさがやっとわかってきたとも言えます。できることなら赤ワイン片手に泣きたかった。合唱。
森山、大塚明夫上條恒彦の声に包まれているだけで嬉しい。

ラ・ボエーム

日本/公演終了/藤原歌劇団(G・プッチーニ作、岩田達宗演出)


パリの屋根裏部屋で共同生活をおくる貧しい詩人が、訪ねてきたお針子と恋に落ち、永遠の別れを迎えるまでを描く。公益財団法人日本オペラ振興会西洋オペラ部門である「藤原歌劇団」の愛知公演、初観劇です。
感想、後ほど。。。

男たちの挽歌

男たちの挽歌(字幕版)
香港/’86年製作/ジョン・ウー監督


犯罪組織の顔役だった男が弟のために過去を清算する。
香港ノワールのはじまりといわれるジョン・ウーの美学が匂う作品。白黒トーンの色味に、スローモーションを多用したアクションシーンと、友情や兄弟愛を謡いあげる演歌調の物語がこってりと描かれ胸やけ気味です。一番大切な人に自分を認めてほしいということかなと解釈。一度捻じれたからといって戻らないものではない。暴力的な場面が続くも徹底した人間讃歌であり、観終わった後のスッキリ感も良し。
チョウ・ユンファとテイ・ロン、弟にレスリー・チャン

スラップ・ショット

スラップ・ショット (字幕版)
米/’77年製作/ジョージ・ロイ・ヒル監督


低迷するアイスホッケーチームが奇抜な方法で人気を取り戻す。
チーム所在地の工場は閉鎖され失業者増加で観客減、チームは解散見込み、選手は廃業目前という最大の危機に選んだ起死回生の一手が、まさかの乱闘騒ぎ。ホッケーなんてお構いなしの罵り合いと殴り合いにより流血を期待するファンが増えていくのは、ブラックジョーク的でグロテスクな爽快感。スラップスティックコメディはあまりなじみがないのと、どの立ち位置から観るかによって受ける印象の異なる作品だと思います。
軽薄なポール・ニューマン

世界名作劇場・完結版 母をたずねて三千里

世界名作劇場・完結版 母をたずねて三千里 [DVD]
日本/’00年製作/高畑勲監督


イタリアからアルゼンチンに出稼ぎに出た母を探す少年の波乱万丈の行程を描く。テレビアニメの世界名作劇場を再編集した劇場版です。
日本アニメーション時代の高畑勲宮崎駿ら後のスタジオジブリを形成するメンバーが多く参加していた作品。1年クールの映像を90分に編集したことで猛ダッシュ感は否めませんが、それでも泣けます。ひたむきな少年に対しこれでもかと起こるトラブル・アクシデントの数々にハラハラしどうしでした。冷たくあたる人がいても、心通う人もいる。つまり、渡る世間に鬼はない。
主人公マルコ役に松尾佳子