ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

十一ぴきのネコ

日本/’12年公演/こまつ座ホリプロ井上ひさし作、長塚圭史演出)


お腹をすかせた都会の猫たちが巨大な魚の噂を信じて冒険の旅に出る。馬場のぼるの絵本をベースに井上ひさしが戯曲化した作品です。
「子どもとその付添いのためのミュージカル」と侮るなかれ。確かに賑やか楽し気な場面も多いものの、その根底にも節々にも井上流の痛烈な現代批評がふんだんに盛り込まれ、決して気楽に観ていられません。特に大団円かと思われた独白からの凄惨なラストシーンには戦慄が走る。欲望とは、自由とは、ユートピアとは。考えるべきことは山ほどあります。
北村有起哉のしなやかさ。山内圭哉の見た目と裏腹の誠実さ。