日本/’22年公演(再演)/こまつ座(井上ひさし作、栗山民也演出)
戦前の日本で経済学者・河上肇の留守を預かる女たちを通じて思想とは何かを描く。
井上戯曲にしてはライトなパッケージでありながらも内容は濃く深く。日本共産党員となり特高に目を付けられ投獄された河上をそれぞれの思いで慕う人々。国の計略に踊らされるなか、河上を助ける術が転向を宣言する「たった一行」だというところに、「ことば」の持つちからの陽と陰が如実に語られるとともに、作家の怒りが表れているように感じました。
保坂知寿による凛とした妻が場を締める。底抜けに明るい元女中の枝元萌も良し。