ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」

日本/'04年公演(再演)/劇団、本谷有希子(本谷有希子作・演出)


親の葬式のため田舎の実家に帰ってきた女優志望の姉、それに伴って一家お互い心に闇を持ち合った過去もまた再来する。昨年に岸田戯曲賞を受賞、さらに小説では芥川賞三島賞の候補となるなど活躍目覚しい本谷有希子による代表作です。映画化もされました。
本谷お得意ドロドロ人間劇。"自分は特別な存在"と言い聞かせなくては生きていけない姉を中心に各自が悩みを、そして狂気を抱える。しかし見ていて嫌気がささないのは、根底に家族愛がみえるから。この芝居には"生きるということ"のひとつの答えがある気がします。
兄嫁の存在の大きさ。彼女の立ち位置をつくったことでこの作品は成功したのでしょう。何より題名に本谷による一家への、そして何かしら共感を覚える人生をおくる者たちへの檄と讃歌が感じられます。