ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

GAMBA ガンバと仲間たち

GAMBA ガンバと仲間たち
日本/’15年製作/小川洋一総監督


イタチに狙われるネズミたちを助けるため、まちネズミと船ネズミが力を合わせて戦う。
名作の誉れ高いテレビシリーズから40年経って製作された、子年に観るに相応しいネズミ大活躍のCGアニメによる冒険活劇。たくさん仲間がいるのにガンバひとりの活躍に頼り切りな面が多く、もう少しチームプレイが欲しかったところですが、原作は15匹もいるそうなのでそもそも描き分けが難しいのかも。白イタチのノロイが恐ろしいのは、背景なく殺戮を楽しんでいるから。理解のできない悪意というのが最も恐ろしい。
ガンバ役に梶裕貴。そのほか豪華声優陣。

心が叫びたがってるんだ。

心が叫びたがってるんだ。
日本/’15年製作/長井龍雪監督


本音を言えない思春期の男女たちがミュージカルを通じて心を開いていく。2年後に実写化もされたアニメ作品です。
秩父を舞台にアニメツーリズムとしての評価高く、はてさて作品はというところ。結論、予想外に面白かったです。おとぎ話仕立てとミュージカルとが少しかみ合わせがよくないようにも思いますが、若者のこっぱずかしい青春模様がみずみずしく描かれていて好感。夢物語がラブホテルからはじまる設定や、安易なハッピーエンドではない恋模様など、一捻りしてくる脚本も良し。そのなかで親の影の薄さは意味深長。
かわいらしいながら芯のある声の水瀬いのり

チェイス!

チェイス!日本劇場公開版(字幕版)
印/’13年製作/ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督


父親の命を奪われたサーカス団の息子が、死に追いやった銀行へ復習する。インドの興行収入を塗り替えたという大作です。
派手なアクションとキレキレのカメラワークに興奮冷めやらぬボリウッド映画。禁じ手でもあるトリックの種を早いうちに明かし、揺れ動く心模様に軸を切り替える構成の巧みさは秀逸。サスペンス劇場よろしく唐突な場所で幕を引くのが気になりましたが、夢が詰まった改造バイクのギミック含め、全体通して抱くワクワクは余りあるものがあります。
インドが誇るアーミル・カーン。至高。

通し狂言 南総里見八犬伝

日本/’15年公演/国立劇場曲亭馬琴作、尾上菊五郎監修)


主君の無念を晴らすことを運命づけられた8人の男たちの物語。新春歌舞伎です。
姓に犬の字が与えられ、牡丹のあざがあり、八つの文字が浮かぶ水晶の玉をもつバラバラの者たちがひとつの本懐を遂げるため次第に集まっていくロールプレイング的ストーリーと、舞あり殺陣あり見得あり、見せ場満載の現代に引き継がれるエンターテインメントの王道。タルさを感じないといえばウソですが、気楽に、なんならながら観でダラダラと、大変楽しめる作品でした。8人は不要だなとも思いますが。
尾上菊五郎の色気。

ぼくらの七日間戦争

ぼくらの七日間戦争
日本/’88年製作/菅原比呂志監督


理不尽な大人たちに反旗を翻す中学生たちの戦いを描く。
その後を気にしてしまうのは悪い癖で、刹那性を純粋に楽しめばいいのでしょう、30年も前の映画にかかわらずそこで描かれている学校への不満は、ブラック校則が社会現象となった現在でもまったく変わっていないことに暗鬱になります。さすがに教師による直接の暴力は減っているのですが、それも世間の批判が大きいからという消極的理由であり、「なぜ・どうして」という根本的な問いかけに答えてはいないのです。
菊池健一郎、鍋島利匡、宮沢りえ大地康雄の憎々しさが秀逸。

魔界転生

日本/'18年公演/日本テレビ明治座マキノノゾミ作、堤幸彦演出)


欲望のまま超人的な魔物に転生した人間と戦う柳生十兵衛の活躍を描く。日本テレビ開局65年記念として山田風太郎の同名小説を舞台化した作品です。
山田作品に醍醐味なエロ・グロ・バイオレンスが全然なく大味な舞台で、まさか後日の放送用にコンプライアンス配慮したんじゃないだろうなという穿ちも生まれる。キリシタンの蜂起を主導した青年・天草四郎の怨念が主軸となりつつ、大坂の陣での怨念、太平の世で剣に生きるものの怨念、それぞれにストーリーがあってまとまらないのが原因だと思います。映像を多用しており、劇場でみると効果的だったのかも。
上川隆也の安定感と存在感にびっくり。

サカシマ

日本/公演終了/廃墟文藝部(斜田章大作・演出)


最期を目撃した怪しげな男の元で働きながら、飛び降り自殺した姉の真意を探る少女の5秒間を描く。
ハンプティダンプティ、落ちた卵は戻らない。悩み事相談室に電話をしながら飛び降りた女。100メートルのビルを落ちていくたった5秒間に、人は何を考えるのか。その着想は刺激的ですが、ここで描かれる「家族」にリアリティがなく、どうしても作品に入り込むことができませんでした。それよりも、言葉巧みに死を導く男がいつも同じ時間に飛び降り自殺でついたシミのもとへ行き、煙草をふかすことの方が人間味が感じられてよかった。
繊細な役の似合う八代将弥。