ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「赤線地帯」

赤線地帯 [DVD]
日本/'56年製作/溝口健二監督


売春禁止法制定前夜の吉原を舞台に、辛くもたくましく生きる女たちを描く。溝口健二の遺作となった作品です。
見事な群像劇。身体を売ることを通して社会を斬る。親とは、子とは、家族とは。絆という言葉が氾濫する昨今の世の中で、ここで描かれている関係性こそ真実であると思う。ただし、決して善悪では語らないところがミソで。それが証拠に、この作品の中で嫌な奴というのは誰ひとりとして出てこないのです。それにしても男の情けなさに対して、女の強さたるや。大切なのは、ただ粛々と生きるということ、それだけなのでしょう。
京マチ子インパクトと、若尾文子の美しさ。大女優は今見ても大女優なのでした。