ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

大逆転

大逆転 (字幕版)
米/’83年製作/ジョン・ランディス監督


金持ちの賭けの対象となり金と地位が逆転した2人の男の大逆転の結末を描く。
設定のブラックなえげつなさが過ぎるもさすがハリウッドのエンターテインメント、さすがジョン・ランディス、心地よいリズム感で頭空っぽにして楽しめる。言動粗雑なお調子者は環境が与えられればその才覚が発揮できるのに対し、品行方正なお坊ちゃまは落ちぶれても環境から寄ってくるのはご都合主義ですが、きっと現実もそういうものなのでしょう。
2大コメディスター、ダン・エイクロイドエディ・マーフィー

カリートの道

カリートの道 (字幕版)
米/’93年製作/プライアン・デ・パルマ監督


裏社会を渡り歩いた男が出所後堅気の道を歩もうとする。
生き方を変えようとしても、過去の経歴が、人間関係が、社会の構造が、させてはくれない。楽園を夢見ながら、そこに至るにはしがらみの中でもがくしかなく、逆に絡み取られていく。冒頭で自身の死から語られるので最悪の結末は承知しているものの、過去の自分が自分を殺すことで、連鎖は断ち切れないことまで突きつけられて深いため息が出ました。
アル・パチーノはもちろんのこと、友人の弁護士役のショーン・ペンが強烈。こういう役もやれるんですね。

小野寺の弟 小野寺の姉~お茶と映画~

小野寺の弟・小野寺の姉 -お茶と映画- [DVD]
日本/’13年製作/ホリプロ西田征史作・演出)


喧嘩した2人暮らし姉弟の家に映画クルーがやってきて撮影に巻き込まれることでお互いの胸の内を知る。小説のアナザーストーリーで、後に映画版もあるとか。
設定は『間宮兄弟』なのですがなんとも後藤ひろひと感が強いのは戯曲の構成なのか、それとも一部キャストのせいなのか。きっと後者です。やさしさの嚙み合わなさが軋むときだってそりゃあって、それでもちょっとしたことで元のように回り出す。みんながダメダメでも、明日も生きてみていいかなと思える作品でした。
周りが強烈で、向井理片桐はいりが霞む。

カラフル

カラフル [DVD]
日本/’10年製作/原恵一監督


やり直しのチャンスを得た魂が、自死を選んだ中学生の身体に入り込み人生を見つめ直す。
このえぐみが当事者世代に伝わるのか非常に興味深い。異世界転生モノが一ジャンルを築き上げたいま、自分のことがわからないのに転生したからといって思うように自分をコントロールできるわけないよね、というのは凄く腑に落ちる。1と0で構築された現代社会における、そうでないもののもどかしさを、カラフルという言葉で具現化した良作でした。ただ、えぐい。
同級生の女の子役に宮崎あおい、うまい。

君たちはどう生きるか

日本/’23年製作/宮崎駿監督


母を亡くした少年が不思議な鳥男に誘われ、謎の構築物にまつわるエネルギーに巻き込まれていく。STUDIO GHIBLI最新作です。
宮崎アニメの集大成にしてゴリゴリの意欲作。「君たちはどう生きるか」との問いは、これまでの作品において居心地の良い夢物語を乗り越えて自ら修羅の人生を切り開いていくことを選択しているように、生涯一貫したテーマそのものであった。この作品は老人の説教でも先達のご指導でもなく「俺はこう生きている、お前はどうか?」とニタニタ笑いながら愉快に挑発しているのだと思います。観てよかった。
声優陣はいままでのなかでは違和感少なめ。情報ゼロだったので先入観なく良かったのかも。

すこたん!

日本/’21年公演/serial number(詩森ろば作・演出)


ゲイバイ男性のための場をつくった2人の男性の30年の軌跡を中心に、生きづらさを抱える人々の姿を描く。
ひたむきに頑張るマイノリティ、ではなく悪態はつくし、身勝手だし。でもそれが当たり前と思われてないからこうして物語になるのであって、根深さに溜息が出ます。そもそも、はじめにマイノリティでくくってしまっている自分がすでにステレオタイプにハマっているのだと今気づく。これはただ彼らひとりひとりの物語でしかないのだから。
きっと悩みながら、それでいてエンターテインメントに昇華させた役者陣に拍手。