ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

ポセイドン・アドベンチャー

ポセイドン・アドベンチャー [DVD]
米/’72年製作/ロナルド・ニーム監督


晦日の夜に転覆した豪華客船で生き延びるため奮闘する人々を描く。
勇気をもって行動する者のみが救われるという、まさにアメリカ的なタフガイものですが、その貫き通し方がすごい。最たるものとして「救わなくてもいい、邪魔をするな」と神に向かって言い放つ牧師が主人公であるところでしょう。その正義感が鼻につくことまでも計算され尽くしたラストへの脚本のうまさには脱帽です。群像劇のキャラの立たせ方といい、半世紀近く前の映画なのにそれほど古びた感じのしないつくりといい、予想以上の収穫でした。
アメリカの象徴たるジーン・ハックマン。こちらもひとつの象徴かもアーネスト・ボーグナイン。他にもオスカー俳優がそろう。

アダムス・ファミリー

アダムス・ファミリー (字幕版)
米/'91年製作/バリー・ソネンフェルド監督


怪しげな一家の財産を狙って男が潜り込んだことで起こる騒動を描く。漫画を原作にTVシリーズ化した人気作の映画版です。
観たことがなくても聞いたことはあるあのテーマ曲。アメリカ的なコメディセンスで繰り広げられるホラーなドタバタ劇は、それいて一貫して家族を描き、いつの間にか人情劇に変わり心温まってしまうこの馬鹿らしさ。クセのある食材をマイルドな味付けで調理してあるから食べやすく、物足りなさはあるけれど、これはこれで誰もが楽しめるので良いのではないでしょうか。
当主にラウル・ジュリア、潜り込む兄にクリストファー・ロイド

劇場版 どうぶつの森

どうぶつの森 [DVD]
日本/’06年製作/志村錠児監督


さまざまな動物が集まり生活する村に引っ越してきた女の子が自分の夢を探す。人気テレビゲームの世界を映画化した作品です。
コロナ禍の巣ごもり期間に流行りを押し上げたゲームタイトルですが、プレイ経験なく。ゲームのようにスタートボタンを押したらはじまる世界と同じつくりなので、作品に入っていくのに少し違和感があり。また、世界の前提を理解するまでに時間がかかるのが難点。なにを狙っての映画化かよくわかりませんが、ここではないどこかで気ままに暮らしたい人が大勢いるんだなあということが喉の奥に詰まっています。
主人公の声に堀江由衣

ナミヤ雑貨店の奇蹟

ナミヤ雑貨店の奇蹟
日本/’17年製作/廣木隆一監督


シャッターの隙間に悩み事相談の手紙を入れると返事がもらえる雑貨店の時を超えた奇蹟。東野圭吾の同名小説の映画化です。
群像劇のように描かれていた物語がひとつの軸に集まってくるギミックに対し、あまりまとまり感のない描き方。それぞれのエピソードはよく出来ているので、繋ぎの役目を果たすはずの少年たちのシーンに魅力が乏しいからかしら。手紙というツールは平凡ながらも相談事という視点が良い。もっとうねりをもってエピソードが連動していけば、奇蹟を感じられたかもしれません。
ヤンキーのリーダーに山田涼介、雑貨店主に西田敏行

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破
日本/’09年製作/庵野秀明総監督


"使徒"と呼ばれる侵略者と戦うため人造人間「エヴァンゲリオン」に乗り込む少年の迷いと葛藤を描く、リニューアルシリーズの第2作目。8年ぶりの鑑賞です。
前回の感想は「色んなものを放り投げ」ているといったものでしたが、3作目『~:Q』を観てから観直すと何かしら意味がある気がしてくるから不思議なものです。1作目は旧シリーズを沿うかたちだったのが、2作目で新キャラが登場し、じわじわと誰も観たことのない「ヱヴァンゲリヲン」が描かれていく期待感とでもいうのでしょうか。あえて戦闘シーンにかぶせるように流れる歌謡曲の使い方が秀逸。
ヒロインが3人。林原めぐみ宮村優子、そして坂本真綾

日本沈没

日本沈没
日本/’73年製作/森谷司郎監督


大規模な地殻変動により国土が消滅する危機に直面する「日本」という国を描く。小松左京の同名小説の映画化です。
単なるパニック映画と侮るなかれ。未曾有の災害に国家は何をなすべきかを痛烈に問いかける物語は、返す刀で、国民とは何か、国とは何かを突きつける。フィクションとしておよそ半世紀前に描かれた警告は、その後の幾たびの震災において、果たして顧みられることはあったのか、これからどのように考え行動するつもりなのか、そこまで問われている気がしてなりません。
問いかけに逆行する言い方ながら”日本人離れ”したタフガイの藤岡弘

太陽の王子ホルスの大冒険

太陽の王子 ホルスの大冒険 [DVD]
日本/’68年製作/高畑勲監督


正義感の強い少年が恩を受けた村を救うため悪魔と戦う。高畑勲長編映画初監督作です。
のちの未来少年コナン、そしてスタジオジブリ作品に繋がっていく系譜の冒険活劇映画。主人公が村八分になったり、ヒロインの設定が複雑だったりと、子供向けとはいえない内容に唸る。はっきり言って、いま観るには耐えられないほど時代を感じる作品ではありますが、発表された当時からいま現在までのアニメ映画の進化を語るうえで外せない作品であることは確かで、観てよかったです。
ホルスの声に大方斐紗子ヒルダに市原悦子