ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「その男」

日本/'09年公演/鈴木聡作、ラサール石井演出


一度自ら命を捨てたが助けられ新しい人生を歩むことになった男が捜した、生きる意味。池波正太郎による同名小説を上川隆也主演で舞台化した作品です。NHKによる編集版。
幕末の動乱の中、救われた恩人であり先生であり肉親同然の男に「時流にのまれず傍観者であれ」と言われた男の苦悩。腕が立つのにそれを揮えず、置いてきぼりを食わされているような思いはわかるような気がします。しかしこの物語は「それでよい」と言います。本当の幸せは動乱の外にあると。確かにその通りではありますが、なんというか「タバコは害だから吸っちゃだめだよ」的な。至極当たり前のことを言われても、という感じもしました。
役者。文句なしで池田成志でしょう。時にそのやり過ぎ演技で共演者を笑わせ、時に2枚目と3枚目をサラリと使い分ける。キムラ緑子も艶かしくてステキでした。