ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「ダブルB面フォノグラフ」


日本/公演中/空宙空地


おぐりまさこ主宰による名古屋の「空宙空地」第二回公演です。前回*1と同じくおぐりと関戸哲也がそれぞれ作・演出を担った本編1本と短編2本の、力業から人生模様までお得で良質な3本立て。
村上春樹の短編「蛍」が「ノルウェイの森」になったように、前回公演の短編を膨らませた本編『アナログデバイスドライバー』(おぐり作・演出)が秀逸でした。カニバリズムを扱ったサイコホラーが、ドナー提供にかかる倫理的問題を照らす社会派人間ドラマへと昇華され。巻き戻る時間のなかでその日その時々で主役が移り変わり、誰かの話ではなく誰もの話なのだと言われているようで。
役者陣。関戸作演の『LAST TRACK』でのおぐりも好きだが、火田詮子には驚かされた。あの北村想『寿歌』初演に立ったという伝説の女優は本編では演技が浮いていたが、この短編ではまさに世界を構成していたといってもいい。「声の威力」というのを肌で感じたのは得難い体験でした。

*1:『零年』→id:totte:20140421