ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「らくだ」

日本/'09年公演/劇団民藝(別役実作、山下悟演出)


長屋を追い出された大家がくず屋となって生きているの死んでいるののすったもんだの不条理喜劇。古典落語を下敷きにした別役の書き下ろしを、重鎮・大滝秀治主演にて新劇で上演された作品です。
「死んだあたしを運んでいるあたしは誰だ」という落語らしいなんともトボけた会話から、世直しの狂喜乱舞も同じ様にみな自分自身がわからなくなっていると説く。死してなお舞い踊るのは生死を越えて、まるでただそこに存在するだけでええじゃないかと言っているようです。不条理な設定ではあれど、登場人物のバックボーンがしっかり描かれており流石は新劇だなと。高座から電信柱が運ばれてきて一転別役ワールドに変わる演出は恐れ入りました。
はじめて大滝秀治の演技をまじまじと観ましたが、失礼を承知で言わせてもらえば、滅法うまい。お酒のシーンは格別。