ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「ディア・ドクター」

ディア・ドクター [DVD]
日本/'09年製作/西川美和監督


田舎の集落で地域医療を担うニセ医者の医術への気持ちの揺れを描く。主演の笑福亭鶴瓶が異色キャスティングながら賞を総なめにした作品です。
「医者とは何か」を痛烈に問うていると思うのです。同じ設定で手塚治虫の「ブラックジャック」の一編にもあったかと思いますが、西川美和による差別化は患者側の期待をも不安定なものであるとするところでしょう。これはあまりに露骨で、でも間違いなくそうなのだろうと。そして身に覚えがある分、この映画に出てくる人間は誰も責められない。観て刺さったこの小さなトゲは残り続けるかな。
診療所で一緒に働く余貴美子が良い。すべてを知った上でベストではなくベターな選択をとることは容易ではなくて。特にこの場合のベストはワーストにもなりうるのだから。