ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「劇場版日本三文オペラ」


日本/公演中(初日)/ピッコロ劇団(内藤裕敬作・演出)


戦後の大阪を舞台に、国有の鉄屑を拾って売りさばく泥棒集団「アパッチ族」の姿を描く。大阪の作家・開高健の同名小説を「南河内万歳一座」の内藤裕敬が演劇化した群像劇で、過去3回上演された作品です。
焼け野原の大阪で行き場もなく泥棒行為を正当化しながらその日を生きる人々のたくましさと弱さ。明らかな犯罪行為をすることで今の暮らしは終わってしまうけれど、それでもみんな自分を誤魔化してでも下を向かない、そんな前向きなエネルギーが清々しいです。整った劇場で、税金が使われた県立劇団による、国家権力と喧嘩する泥臭い芝居。大好きです。あの時間あの場所はまさにテントであり、倉庫であり、戦後すぐの大阪城近辺であったと思います。
43人の出演者を演出しきる内藤の手腕に感服です。さりげなく的確な視線の誘導が行われるため非常に観易く、とにかく観ていて楽しい。男臭い芝居の中でおかみさんの中心的人物役の今井佐知子が深みを出す。