ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「小町風伝」


日本/公演中/下鴨車窓(太田省吾作、田辺剛演出)


ある老婆の昔の記憶と幻想とを描く。大杉蓮らを擁し"沈黙劇"というジャンルを打ち立てた「転形劇場」、それを率いた劇作家・演出家の太田省吾の代表作にして岸田戯曲賞受賞作を京都の劇団「下鴨車窓」が上演したものです。過去の様々な名作に現代の演出家が挑む、伊丹のアイ・ホール主催「現代演劇レトロスペクティヴ」の一環作品です。
もともとは能楽堂での公演、主役の老婆は台本上では饒舌に語るのに対し舞台上では一切喋らず全てを表現した、という何かと"伝説"なオリジナル戯曲。それを正攻法ではないやり方で挑んだようで、劇場のホールだけでなくロビーの廊下や調光室などに上演スポットを設け不確定多発的に演者が表れ、それを観客が能動的に目撃する「展覧会形式」という上演スタイルでした。さらに観客には音声再生機器が配布され、舞台上では発せられることのない「言葉」が聞けるようになっています。
まあ一体何が「正攻法」なのかという疑問はありますが、僕には今回の演出意図を全く掴むことができませんでした。"理解"は少しだけできるのですが。何より観ていて惹かれない。朗読劇を立体模型(生身の人間ですが動きがほとんどないので)で置いてあるだけでしょう。ダンスカンパニーにやらせたら面白かったかもしれません。3階までを行ったり来たりしたので運動にはなりました。