ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「THE BEE」

日本/'07年公演/NODA・MAP(野田秀樹/コリン・ティーバン作、野田秀樹演出)


家族を人質に取られた平凡な男が、犯人の家族を人質にし返すことから起こるサイコ劇。筒井康隆の小説「毟りあい」を原作にし、野田秀樹がロンドン公演用に書き下ろした戯曲を日本版に直して逆輸入した作品です。
善良な被害者が瞬時に凶悪な加害者に変わることの恐怖。どちらの犯人も家族思いであるという点が余計切ない。紙を使った舞台が非常に斬新で刺激的です。仕切る、映写する、破る、突き破る。多種多様な活用方法は視覚的にも聴覚的にも、また役者を通して触覚的にも紙の「ザラリ」としてそうな質感が伝わってきて、恐怖を膨張させる効果をもあげています。役者のスイッチも素晴らしい、ただ笑いがあまりに少なくて70分ほどでも内容面からちょっとしんどかったです。
野田秀樹の狂気。"恐い"というよりかは"怖い"。背筋がゾッとします。秋山菜津子はいつもこういう役ですか。コンドルズ以外の近藤良平の演技は初めて観ましたが、俳優としてもやっていけそうです。浅野和之が安定してて唯一の心の休まり所。