ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「犀」

日本/'87年公演/ウジェーヌ・イヨネスコ作、木村光一演出


ある街に突如現れた犀、そしてだんだん街の人が犀に変わっていく。不条理劇というくくりの代表作のひとつに挙げられる作品です。
初めはごく少数の犀だった。街の人々もそこまで関心はない。だんだん数が増えていき、知り合いが犀になる。そして街の人の大半が犀になる。そんな中で男が一人それを断固拒絶する。おおまかで全ての内容はこんな感じです。"犀"は具体的なものではなく抽象的な何か、シンボルとしての何かなのだと思います。以前耳にしたのでは犀はナチスを表しているという見方もあるようです。それが何であれ、初めマイノリティのものがいつの間にか、至極当然のようにマジョリティに変わる。マジョリティだった人が、自分がマジョリティじゃないことに不安を感じる。いわゆる集団心理。でもこれ人間の本質ですよね。
多分"犀"が象徴しているのは一つのものじゃないでしょう。それは何にでも当てはまる。不条理劇ではあるもののかなり社会派劇であるように思いました。