ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「天国と地獄」

天国と地獄<普及版> [DVD]
日本/'63年製作/黒澤明監督


仕事一筋の男にふりかかった計画的誘拐事件、標的にされた男とその周りの人間模様、犯人を追う警察の姿を描くサスペンス映画の金字塔。エド・マクベイン原作「キングの身代金」を黒澤明が映画化したものです。
「黒澤」という名前に躊躇していましたが、これが面白いの何の。2時間半という長丁場を一度も感じさせず、また一瞬たりとも飽きさせないその脚本と構成、映像に人物描写に役者の演技、全てに溜息。誘拐の動機が少し弱い気もしますが、他は文句なしです。モノトーンの中に映るカラーの煙突の煙は鳥肌ものでした。「踊る大走査線」にそっくりのシーンがありましたよね。オマージュかしら。
タイトルの"天国と地獄"には物語中の様々な意味合いが込められていて、この作品にはもう他の題名なんてつけようのない見事なタイトルだと思います。タイトルに感動したのは初めて。