ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「俺たちに明日はない」

俺たちに明日はない [DVD]
米/'67年製作/アーサー・ペン監督


何となく出会った男女、何となく一緒に街を飛び出して、何となく強盗でも。何となく大人数になって、何となく警官に追い詰められていく。世界恐慌時という時代設定による劇中の閉塞感と、公開時である60年代後半の現実社会の閉塞感を重ね合わせ、いわゆる"アメリカン・ニュー・シネマ"の先駆けとなった作品です。
明日に向かって撃て!』+『勝手にしやがれ』な映画。いえ、『〜撃て!』の方は2年あとの作品なのですが。それらに共通するものは、とりあえず"日常"を飛び出し"刺激"に埋もれたい、という思いが溢れ出てること。そして一見自らすすんで死を引き寄せているかのようなのに、死をもってしても"幸福"になるわけではない、ということ。そう、"閉塞感"。
公開当時の世相を巧みに掬い取り、しかも今観ても全然古びてないところが名作たる所以なのでしょう。ただ自分としては『〜撃て!』の方が好き。向こうは常に楽しそうなのに対して、今作は常にどこか暗い(?いい言葉が見つからないのですが。)雰囲気が漂っており、エンターテイメント性が弱いと思うからです。特にラスト。余韻もヘチマもないあのラストが、この映画の全てをあらわしています。