ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

ドロステのはてで僕ら

ドロステのはてで僕ら
日本/’20年製作/山口淳太監督


とあるカフェと2Fの自宅のモニター画面が2分間の時差で繋がってしまったことから起こる小さなドタバタ劇。劇団「ヨーロッパ企画」初の長編映画です。
出世作である舞台『サマータイムマシン・ブルース』の系譜をいくSukoshi Fushigiな世界。練られた脚本と壮大なパラドックスとチマチマした展開は上田誠節全開で、近年劇団公演から足が遠のいていたけれどこのテイストならまた観てもいいなと思います。映画というにはあまりに小品ですが、ヨロ企ここにありと言える内容で満足でした。
土佐和成をはじめいつものヨロ企メンバー。そこに混ざる朝倉あきの可愛さたるや。

劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(フジテレビオンデマンド)
日本/'13年製作/長井龍雪監督


水難事故で死んだ女の子がかつての友達の前に現れ去っていった夏を思い出すその後の仲間たちの姿を描く。TVシリーズ(未見)の映像をベースに新作エピソードを交えた映画版です。
総集編は得てして置いてけぼりされることが多いなかで、1年前の出来事を振り返るという設定が書き足されたことにより、躓きつつも経緯を理解できたのは脚本の力でしょう。閉じ切った狭い世界とご都合的なラストにはいやいやちょっと待ってと思いつつも、ZONEの名曲「secret base〜君がくれたもの〜」の狙い撃ちに射止められ号泣。
うじうじした入野自由

ペイルライダー

ペイルライダー(字幕版)
米/’85年製作/クリント・イーストウッド監督


金鉱を巡り対立する西部のまちに流れ着いたガンマンの牧師が因縁の相手と対決する。
アメリカの時代劇たる西部劇らしく単純明快でオーソドックスな物語。寡黙で、強く、女にもてて、弱き者に優しい男が、スーパーマン的に敵をバッタバッタと倒していく姿に観る側も夢を託したのでしょう。主人公の過去がどんなだったのか劇中で語られませんが、そういう触れがちな無駄をバッサリ切って観やすくする脚本の巧さ。
誰もが惚れるイーストウッド

オネアミスの翼 王立宇宙軍

王立宇宙軍 オネアミスの翼 [DVD]
日本/’87年製作/山賀博之監督


無気力な男が社会システムに違和感を抱きながら世界初の宇宙飛行士になるまでを描く。ガイナックスのデビュー作で、タイトルの語順はキネ旬DBに基づきます。
地球に似た別の星のお話のようで、実は『猿の惑星』よろしくにも感じる世界は、ずばり文明批判であり、そして人間讃歌でもある。厭世観を抱きつつも宇宙に何かを求めて飛び立つ主人公と、史上初の有人飛行という大きな挑戦に突き進む開発チームの姿は、庵野秀明樋口真嗣前田真宏などいまの日本映画界を掻き回す当時の若手製作者たちそのものなのかもしれません。
独特な空気をつくる森本レオ

シックス・センス

シックス・センス (字幕版)
米/’99年製作/M・ナイト・シャマラン監督


見えないものが見える少年と小児精神科医とが心を通い合わせていく。
幼い頃は今よりもいわゆる「第六感」が研ぎ澄まされていた気がします。それは霊感だけではなく、何かを感じとる力とでも言うのでしょうか。そんな誰にでも身に覚えのあるかつてのザラリとした感覚を見事に物語に昇華した作品。すべての伏線が一気に解消されるラスト、これだけ有名な映画ながら前知識なく観ることができたのは本当によかった。
マッチョじゃないブルース・ウィルスと、絶大な人気を博したハーレイ・ジョエル・オスメント

チャイナタウン

チャイナタウン (字幕版)
米/’74年製作/ロマン・ポランスキー監督


水不足に悩むかつてのロサンゼルスを舞台に、私立探偵が陰謀に巻き込まれる。
金と欲が死体を生むサスペンスと、小気味よいユーモアによる正統派ハードボイルド映画。そこかしこに出てくる「チャイナタウン」という単語に潜む気配にピンとこないと色々とすんなり入ってこないけれど、それでもノワールの香り漂う雰囲気に酔う。筋が2本あることに気づくまでは追うのが大変な脚本はアカデミー賞を受賞しています。
ふてぶてしいジャック・ニコルソン、それよりもふてぶてしいジョン・ヒューストン

ナチュラル・ボーン・キラーズ

ナチュラル・ボーン・キラーズ ディレクターズカット (字幕版)
米/'94年製作/オリヴァー・ストーン監督


生まれついての人殺しのカップルが、運命に従い愛と殺人に突き進むロードムービー
無名時代のクエンティン・タランティーノの脚本を原案としたバイオレンス映画で、公開時は上映禁止が相次いだとか。センセーショナルな暴力的な表現よりも、めまぐるしく挿入されるイメージカットと、痛烈な社会批判・マスコミ批判のインパクトが勝るエネルギーに圧倒されました。胸糞悪くも最高にハイになれる嗜好品のような作品です。
ウディ・ハレルソンジュリエット・ルイスの殺人狂よりも、記者役のロバート・ダウニーJr.の狂気。