ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「O2-T1」

日本/'18年公演/爆笑問題


5本のオムニバスからなるSFコント集。爆笑問題30周年記念単独ライブの地上波放送で、コントライブ自体約20年ぶりだとか。
太田光の主義主張と田中裕二の必要性がよくわかるエポック作品。時事ネタを得意とする漫才さながら、時空を行き来しているような会話から「平成」を炙り出しつつ、これみよがしな伏線を最後は力技でねじ伏せるパワー。理屈っぽい「爆笑問題」を「でたらめ」という箱に入れたことで彼らは生き残ってきたのだなと思いました。
テレビではあまり見ることのない暴走しない太田と、暴走する田中。

「HERO」

HERO 特別限定版(3枚組) [DVD]
日本/'07年製作/鈴木雅之監督


政治家のアリバイ工作に巻き込まれた傷害致死事件の裁判に奔走する検事たちを描く。大ヒットTVシリーズの映画版で、以前に2作目を観ています*1
事件の大小ではなく、そこにある疑問を解決するために動き回る型破りな検事。TV版を観ていないとよくわからないところも多いのですが、魅力的なバイプレーヤーたちがにぎやかにつかず離れずしている姿を微笑ましく観ながら、それぞれのプロフェッショナルの意地と矜持が感じられて、予想以上に楽しめました。
木村拓哉松たか子のペアに、映画版ゲストとして松本幸四郎森田一義、そしてイ・ビョンホン

*1:id:totte:20150930

「翼の卵」

日本/'18年公演/劇団桟敷童子(サジキドウジ作、東憲司演出)


九州の実家に転がり込んできた長男夫婦と、そこで暮らす家族の物語。劇団桟敷童子は初見です。
グズグズで崩壊しかけの一家と、義理人情に厚い間借り人の解体業者たち。逃れられない血のつながりの苦しさと哀しさは重く切ない。救いのない展開がちょっといい話で終わるものの、弟たちのサイドストーリーが投げっぱなしになってしまってしっくりこず。人間賛歌であるならそこまで目を配ってほしかったです。
客演に原田大二郎。ガタイはいいけど弱っている心優しいおじさんを好演。

「ゼロの焦点」

ゼロの焦点
日本/'09年製作/犬童一心監督


松本清張原作映画、二度目の鑑賞*1です。
以前に観ていたことをまったく思い出せず、一部既視感を覚えながらもラストまでいってしまったことが一番の衝撃でした。過去を捨てて生まれ変わりたいという欲求はいびつなもので、事実から目を背けようとしたから不要な殺人を招いてしまったのでしょう。誰もが弱く脆く、それを笑うことはできない。
広末涼子中谷美紀木村多江。薄幸が似合う女優たち。

*1:id:totte:20141012

「図書館戦争 THE LAST MISSION」

図書館戦争 THE LAST MISSION スタンダードエディション [DVD]
日本/'15年製作/佐藤信介監督


言論の自由が法律で縛られた平行世界で、本を守る図書館隊員の命をかけた戦闘を描く。有川浩の小説の映画版*1続編です。
誰のために何を守るのか。国と地方自治体の戦争という設定はファンタジーではありますが、誇張されたその内側にある芯の部分で提示される問いは現実世界にとってもかなり重いものです。ただそれをこの映画では伝えきれていない。簡単に出ない答えだからこそ、もっと丁寧に、深く、そしてエンターテインメントに描いてほしかったです。
榮倉奈々岡田准一の凸凹コンビは健在。

*1:前作→id:totte:20130428

「あん」

あん DVD スタンダード・エディション [ 樹木希林 ]
日・仏・独/'15年製作/河荑直美監督


どら焼き屋の店長が元ハンセン病患者と出逢い、凍った心を溶かしていく。
政策のもと隔離されてきた事実と、無くならない偏見。耳を澄ませなくてはいけないのは小豆であり、季節であり、これまでに埋もれさせられてきた人々の声なき声なのでしょう。どら焼きの中身であるあんに丁寧に向き合うことで、心の中身までしっかりと届いていく細やかな構成が素敵です。
樹木希林の最期の主演作だとか。永瀬正敏の不器用な感じに的確な距離感で寄り添う。

「王様と私」

王様と私
米/'56年製作/ウォルター・ラング監督


シャムの王国に家庭教師として招かれた英国人の女性教師と、近代化を目指す王様の文化を越えた交流を描くミュージカル。
西洋化に生き残りをかける未熟なアジアに対し、教養と権利を教える成熟したヨーロッパの構図。バカにするような描写はなく好感をもてたのが、いまでもブロードウェイでロングランのかかる由縁なのでしょう。一代では因習があらたまることはなく、少しずつ変化していくというラストも良し。
それでも王様役がアジア系ではなくユル・ブリンナーだという事実。ヒロインにはデボラ・カー。