日本/'98年製作/北野武監督
心に傷を負って退職した刑事が病身の妻と旅に出る物語。ベネチア金獅子賞受賞作で、北野作品は初見です。
下馬評はよく耳にするのですが、あらためて自分で観てみるとやはり「あのたけしがこんな映画撮るのか」と意外に思ってしまいます。台詞は必要最低限にカットされ、人物もほぼ定位置から動かない。それが逆に登場人物たちの心の動きを強調する、その狙いは確信的。暴力的シーンも多々あるけれど、それも表現のひとつに組み込まれており、嫌悪感は抱かないのです。
ビートたけしと岸本加世子がふたりでクスクス笑い合うシーンが、陰鬱とした物語のなかでひときわ精彩を放っています。