ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

ドライブ・マイ・カー

日本/’21年製作/濱口竜介監督


舞台演出家が愛車を任したドライバーと交流するなかで自身の喪失と向き合っていく。村上春樹の小説を原作とし、キネ旬1位のほか、邦画初のアカデミー作品賞ノミネートということでも話題です。
不貞を働く妻を亡くした男。過去を抱えて瀬戸内でドライバーを担う女。チェーホフの「ワーニャ伯父さん」を人種も言語も異なる役者で上演する芸術祭での公演製作を軸に進む物語には、ぽっかりと空く黒く深い穴をのぞき込むような感触を得ます。まさに村上作品を読んでいるかのよう。世界中がさまざまな物事を喪失したこのコロナ禍という時代性にマッチした作品だったと思います。
西島秀俊三浦透子。手話を使うダンサー役のパク・ユリムが良い。