ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

すばらしき世界

日本/’21年製作/西川美和監督


服役をおえた元暴力団構成員が社会の冷たさとやさしさにであう。佐木隆三の小説の映画化です。
タイトルが凡庸でピンとこないなあと思いながら、観終わるときにその秀逸さに気づく。短気で暴力的な性格はあれど純粋で真っ直ぐな男が生き抜くにはこの世界は不寛容すぎて。目を瞑り、耳を塞ぎ、口を噤むことが社会で生活するための条件であるということを積極的に否定できないことがつらい。たくさんの人に支えられてやっと未来が見え、ついに順応することを選んだときに無慈悲に「死」が訪れたのは、肉体だけでなく、たぶん精神も。
疎外感がヒシヒシと伝わる役所広司