ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

ドクター・ホフマンのサナトリウム

日本/’19年公演/KAAT神奈川芸術劇場プロデュース(ケラリーノ・サンドロヴィッチ作・演出)


フランツ・カフカの第四の未発表長編作品が発見されたことから、場所や時代が迷子になっていく。
不条理なカフカを不条理なKERAが描く、これまさに不条理演劇。そもそも現実では発見されていない作品、ということそのものが物語のキーになっているという何重構造なのかよくわからない秀逸な戯曲は、観ている側を時も場所もあちらこちらに連れまわした挙句、迷子のまま置いていく。なんという不義理、なんという不条理。舞台の上だけでとどめなかったこの作品は、その上演が不条理だったのですね。
多部未華子瀬戸康史