ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

熱帯樹

日本/’19年公演/世田谷パブリックシアター三島由紀夫作、小川絵梨子演出)


裕福な家庭に渦巻く闇を描く。
4人の親子と1人の伯母の5人芝居による歪んだ愛憎劇はまるでギリシャ悲劇さながら。家族4人のそれぞれの思いは狂気的でいて、普遍的でもある。夫と妻、父と息子、父と娘、母と息子、母と娘、そして兄と妹。豊饒なことばで語られる誰かを想う心の内は、逆に誰もが個人であるということを痛感させる。熱帯樹のごとく鬱蒼と生い茂った心の闇はどんどんと拡大していく。良い意味で後味の悪い作品でした。
林遣都岡本玲、栗田桃子、鶴見辰吾中嶋朋子