ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「胎内」


日本/公演終了(マチネ)/刈馬演劇設計社(三好十郎作、刈馬カオス演出)


戦後の日本、脆くじめじめとした穴に閉じ込められた3人の男女の人間模様。再評価の進む三好十郎戯曲を、名古屋の劇団が上演したものです。
閉塞感は凄まじく、観客席まで息苦しい。ただ、穴の中で繰り広げられる光景を眺めるに留まった感があります。現代らしい"配慮"というベールに覆われているのか、汚らしさややらしさ、醜さがなく、そこに息する肉感が乏しく。敗戦直後の日本をそのまま想起させる飢餓と絶望の向こうに光る「生」への泥臭い渇望が、湧き上がるエネルギーが、この作品にはもっと必要であったと思います。
いちじくじゅん、岡本理沙、今津知也。役者はしっかりと応えている。