ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「90ミニッツ」

日本/'11年公演/パルコ・プロデュース(三谷幸喜作・演出)


交通事故で重態の息子を前にして、輸血を拒む父親と説得する医者の倫理観を描く。三谷幸喜生誕50周年祭のうちの1作で、『笑の大学』以来の西村雅彦×近藤芳正による二人芝居です。
あの三谷幸喜がコメディを封印した異色作。輸血拒否は「エホバの商人」の宗教観にまつわる事件や訴訟等で有名な事例ですが、宗教を持ち出したら着地点が無くなってしまうという作家的判断でしょうが、「地域の掟」にしてしまった時点で問題自体は多少濁ってしまったように思います。でもテーマはそれじゃなくて。息をつかせぬ舌戦という意味では成功していましたし、父親と医者のエゴのぶつかり合いも刺激的でした。ただ、輸血拒否という現実問題に作品が勝てなかったという感じがします。舞台美術が作品を喰っていたのもそれはそれで。
西村がどうしてもうまい役者だとは思えないのですが、なぜか「味」だと思わすわけで、そういう意味ではうまいんでしょうかね。近藤の揺れる気持ちが胸を鋭く貫く。