ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「月はどっちに出ている」

日本/'93年製作/崔洋一監督


在日朝鮮人のタクシー運転手の視点から、混沌とした社会をたくましく生きる人々の姿を描く。梁石日の自伝的小説を崔洋一WOWOWで連続ドラマ化、さらに映画化した作品です。共同脚本として劇作家鄭義信が名を連ねています。キネ旬ベストテン第1位。
被差別者たちの生活を描きながらも、生々しさとコミカルさを前面に押し出しメッセージ色を抑えた結果、気負わずに観られる良質な作品に仕上がっています。欲望には忠実で、すぐにカッとなり、その日暮しをし続ける、下品だし不恰好だしダサイんだけどそのダサさにある種の憧れを覚えるのは、彼らが精一杯生きているからなのですかね。鄭義信の描く人間は誰も憎めない。
岸谷五朗の映画デビュー作。有薗芳記が妙に記憶に残ります。