ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

「トランス」


日本/公演終了/劇団OG会(鴻上尚史作、船演出)


現実と妄想の狭間に揺れる3人の男女の物語。鴻上尚史の名作を四天王寺高校演劇部OGによる劇団その名も「OG会*1」が上演したものです。『トランス』は第三舞台のを映像で観てます。OG会は観劇2本目。
丁寧な作りこみ。鴻上色を出さない演出でしたが、木箱の使い方やホワイトボードによる場面説明はおもしろかったです。ホワイトボードが最後混沌とする案はなかなか。照明は顔が少し隠れるスポットが好きです。役者も結構なレベルのものを見せてくれてほぼ満足。ラストを群唱とせず交互に読みあってくのも、群唱好きの自分としては少々不満ですがまあ有りな感じで。
ただラストがいただけない。演出の意向はよくわかります。舞台上の3人ではない第三者が医師として芝居をぶった切り、3人の全てが妄想だったという結論。一瞬にして観客を現実に引き戻す。彼らに最後の言葉を言わせず、突き放す。けれど、真実と幻想(という区分が正しいかはわかりませんが)とが交錯している彼らにとって、それでも「幸福です」と断言できるからこそ彼らは生きていくことができるのでは。そして観客である僕らも。演出は成功していると言えます。ただあれでは彼らが可哀相です。彼らにひとかけらでも救いをあげたい、と考えるのはロマンチストすぎるでしょうか。

*1:「老いても現役かい」と読む、という設定はまだ続いているのでしょうか。