ヴェローナの二紳士
日本/’15年公演/公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団・ホリプロ(W.シェイクスピア作、蜷川幸雄演出)
恋に翻弄される男と女の喜劇。彩の国シェイクスピアシリーズのオールメール作品のひとつです。
終わり良ければ総て良しの精神過ぎて「お前いい加減にしろよ」のオンパレード。愛の誓いを簡単に破り、友情を裏切り、それを俺はこんなに苦悩してるんだぞという男。カッコイイ顔してカッコイイ台詞で語っても言っていることはクソ。一途な友人はまともかと思いきやラストにひとことだけいらんことを言う。それに比べて女性陣のたくましさたるや。
カップリングは溝端淳平と三浦涼介、高橋光臣と月川悠貴。月川は相変わらず性別を超える。
ある天文学者の恋文
伊/’16年製作/ジュゼッペ・トルナトーレ監督
老齢の学者と恋仲の学生が入念に仕組まれた愛の仕掛けに自分を見つめ直していく。
ユーモアにあふれインテリジェンスな講義が、双方向の不器用な愛によって成り立っているからこそ、どのカットもどの台詞も美しいのだと思います。どのように感想を述べても映画そのものまでチープに感じられてしまうのだけれど、並行宇宙のなかではこの映画と同じ分子配列が組まれる瞬間がきっとあると信じます。
オルガ・キュリレンコとジェレミー・アイアンズ。
SOMEWHERE
米/’10年製作/ソフィア・コッポラ監督
映画スターが空っぽな自分と対峙する。
ホテル暮らしでたくさんの美人と寝て、招聘された海外では室内プールのあるスイートルームを用意され、妻とは別れたけれど可愛い娘がいる。なのに満ち足りない、ということを嫌味なく描けているのが凄い。彼の空虚さをセレブの贅沢な悩みとしてはカテゴライズできない、もっと普遍的な何かがそこにあるような気がするのです。
ポジションに絶妙なスティーヴン・ドーフ。