ノブをまわすと

その日観た映画や、演劇をはじめとした舞台公演に、ちょっとした感想でも。

我輩はカモである

我輩はカモである [DVD]
米/’33年製作/レオ・マッケリー監督


小国の宰相となった男が独裁政権を率い果てには戦争に乗り出す。
チャップリンと同時代を生きたマルクス兄弟によるスラップスティック・コメディです。非常に評価の高い映画だけれど、笑いという点ではどうしても古さを拭えず。独裁者の狂気と戦争のバカバカしさを痛烈に皮肉った内容は、当時斬新なものだったことは想像に難くないのですが、もはや教養的に観るしかないのではと思ってしまいました。
グルーチョ、チコ、ハーポ、ゼッポの四兄弟。

パプリカ

日本/’06年製作/今敏監督


夢を可視化する装置を悪用するテロリストに夢探偵パプリカが迫る。筒井康隆の同名小説をマッドハウスが映画化、11年振りに再見。
はじめて観た当時は家電やおもちゃが歪みながら練り歩くパレードシーンに度肝をぬかれた記憶がありますが、あらためて観ると少し冷静になれました。
感想、後ほど。。。

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札(字幕版)
仏/’13年製作/オリヴィエ・ダアン監督


ハリウッドスターからモナコ公国のプリンセスとなった世紀のヒロインが、国の危機に立ち向かう。
グレース・ケリーの実話をもとにしたフィクション。国と家族が同じ単位で語られる日常というのは想像が及びません。「おとぎ話」を現実でも夢見続けるには覚悟がいるということ。郷に入っては郷に従えとよく言うけれど、郷に従ったうえで自分を貫き通すのは何という信念と決意か。ハリウッド復帰を蹴り生涯公妃という役を演じきったグレースは、自分自身の居場所を「おとぎ話」の中に見出したと言えるでしょう。
最初から最後までニコール・キッドマン

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0

GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊2.0 [DVD]
日本/’08年製作/押井守監督


1995年に製作されたアニメ映画にエフェクト処理等を加えたリニューアル版。
内容はさておき。かつての作品をベースに、CGが追加されたり、新たにアフレコされたりしたそうで、デジタル・リマスター版が一般的になるなかでこういう形もあるのかとまずは驚き。さまざまな技術が進化していくと、実写もアニメも古くなる。それを味と捉えたり、仕方のないことと終わらせるのは簡単だが、抗う方法を考えるのも悪くない。とはいえ、もう少しできることがあるんじゃないかなとも思う。
人形使い役が家弓家正から榊原良子へ変更。家弓の代表作のひとつでもあったので残念でありつつ、変更した効果も今一つピンとこず。アニメ映画は役の差し替えが比較的容易で、こちらも悩み深い。

すばらしき世界

日本/’21年製作/西川美和監督


服役をおえた元暴力団構成員が社会の冷たさとやさしさにであう。佐木隆三の小説の映画化です。
タイトルが凡庸でピンとこないなあと思いながら、観終わるときにその秀逸さに気づく。短気で暴力的な性格はあれど純粋で真っ直ぐな男が生き抜くにはこの世界は不寛容すぎて。目を瞑り、耳を塞ぎ、口を噤むことが社会で生活するための条件であるということを積極的に否定できないことがつらい。たくさんの人に支えられてやっと未来が見え、ついに順応することを選んだときに無慈悲に「死」が訪れたのは、肉体だけでなく、たぶん精神も。
疎外感がヒシヒシと伝わる役所広司

記憶にございません!

記憶にございません!
日本/’19年製作/三谷幸喜監督


記憶喪失になった総理大臣がしがらみを断ち切り自らの信じる政治をすすめていく。
政界を舞台としつつホームドラマ的に描くのは三谷幸喜脚本によるテレビドラマ「総理と呼ばないで」と同じ手法。低支持率のダメ首相がその誠実さで変化を起こしていくという筋書きも同じで、おおむね既視感。言い逃れの常套句「記憶にございません」を盛大に茶化したタイトルどおりの、そしてタイトル以上のものは特にない設定頼りの作品なので、またテレビドラマとして連続ものにした方がよかったのでは。
とぼけつつ要所をおさえる中井貴一。それを喰おうとする草刈正雄

紅の豚

紅の豚 [DVD]
日本/’92年製作/宮崎駿監督


アドリア海を舞台に、豚の姿をした賞金稼ぎをはじめとした誇り高き飛行艇乗りの姿を描く。宮崎駿の漫画を原作としたスタジオジブリ作品です。
もう何度観たかわかりませんが、とにかく昨日亡くなられた森山周一郎を偲んでの再鑑賞。小学生で初めて観たときはコミカルな描写に笑いつつダンディズムにしびれていましたが、年齢を重ねるにつれて哀愁と男女の機微に震えるようになりました。糸井重里によるコピー「カッコイイとは、こういうことさ」のダサかっこよさがやっとわかってきたとも言えます。できることなら赤ワイン片手に泣きたかった。合唱。
森山、大塚明夫上條恒彦の声に包まれているだけで嬉しい。